会長挨拶

 このたび第41回日本嚥下医学会学術講演会を平成30年2月9日(金曜日)、2月10日(土曜日)の両日に仙台市において開催します。伝統ある本学会を担当する機会を賜り、藤島一郎前理事長、兵頭政光理事長ならびに会員の皆さまに心よりお礼を申し上げます。

 超高齢者社会に直面する現在、誤嚥を生じる人は増加し、肺炎や窒息といった重篤な呼吸障害を生じるリスクが増えています。本学会では「呼吸を守り、食を助ける科学」をテーマに掲げ、高齢者や嚥下障害患者が安全に摂食出来ることを目的に、学会での講演や討議が嚥下診療の発展の一助となるよう努めてまいります。

 学会の内容を一部紹介します。一般演題には118題の申し込みがあり、口演14群(80題)、ポスター10群(38題)に発表を分けさせていただきました。ともに質疑応答あわせて10分の時間を設定しています。抄録にありますように基礎から臨床まで多彩な興味深い演題をお寄せいただきました。

 特別企画では、研究と手術治療に関するシンポジウムを企画しました。初日の「嚥下研究の新展開」では6名の演者が様々な視点で発展性に高い新しい試みを紹介します。二日目の「嚥下障害の手術」では嚥下機能改善手術と誤嚥防止手術の適応と術後リハビリテーション・支援について、手術の依頼や支援を行うスタッフ側の視線で講演を行います。

 パネルディスカッションでは嚥下障害を生じる二つの疾病群について講演と討論をすすめます。初日の「頭頸部癌治療にともなう嚥下障害への対応」では、韓国嚥下医学会のパーク先生の基調講演に続き、頭頸部癌患者の手術や化学放射線治療の影響による嚥下障害とその対応について3名の新進の臨床家が発表を行います。二日目の「神経筋疾患の嚥下障害」ではALS、多発筋炎・封入体筋炎、パーキンソン病、筋ジストロフィー症と、代表的な神経筋疾患の嚥下障害に関してエキスパートの演者の方々に講演を依頼しました。

 また今回の学会では、各分野を代表する先生による招待講演と特別講演を企画しています。歯科・摂食嚥下領域の植田耕一郎先生に口腔ケアと摂食機能療法を、米国Dysphagia Research Societyのシャキア先生に輪状咽頭筋の気道防御機能とその障害について、呼吸器内科領域の黒澤一先生に嚥下関連肺炎予防の呼吸リハビリテーションについてお話していただく予定です。

 加えて初日夕方の臨床ワークショップ「サルコペニアと嚥下障害」では藤島一郎先生、森隆志先生、西山耕一郎先生に、サルコペニアによる嚥下障害の病態とその治療に関して、疾患概念の構築も含めて議論していただき、二日目午後の教育セミナー「嚥下内視鏡検査」では兵頭政光先生に同検査の評価法や今後の普及について講演をいただきます。これらのセッションは参加者の方々の嚥下診療の発展に大いに寄与するものと思われます。

 会期の関係で、三会場の設定となり、聴講したいセッションが重複することがあるかと存じます。各会場間の行き来が容易な施設ですので、おそれいりますが様々移動しつつ興味深い演題をお聞きいただければ有難く存じます。

 一部の講習で「耳鼻咽喉科領域講習」を、またポストコングレスセミナーでは窒息や誤嚥のリスクに関するテーマの一部で「専門医共通講習」を兼ねて実施しますが、医師以外の多くの職種の方々が充実して聴ける内容になっております。元来、嚥下に関わる講習は多くの職種が参加して行われてその真価が十分に発揮できるものと思います。どうか、すべてのセッションにおきまして様々な職種の方々の参加をお願い申し上げます。

 2月の仙台は市内の積雪は多くないものの風の強い日がございます。どうかあたたかい服装でいらしていただき、東北の冬の自然や味覚に接し、参加者間の懇親も深めていただけますとありがたく存じます。多くの皆さまのご参加をお待ちしております。

耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野 会長 香取 幸夫

ページ上部へ戻る