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学報告

Mayo Clinic in Arizona研修記(2014年10月13日-10月31日)

平成7年入局 渡邊 健一

Mayo Clinic in Arizona (MCA)に行くまで

国外学会参加はいくつか経験があるものの、これまで海外留学の経験がない私です。香取教授に背を押していただき(強めに)、自分自身の臨床的興味およびこれからの当教室での必要性を考えて、咽喉頭悪性腫瘍の経口的手術(Transoral Surgery)の大家であるProf. Hinniが所属するMCAに短期間研修を申し込むことになりました。幸いにもMayo Clinicという病院自体が、研修・指導・知識の伝達といったところに積極的な気風があったようで(後で知りました)快諾いただき、病院で用意されているVisiting Physician Programに申し込む形式で、必要な書類等を提出しました。

MCA研修


Hinni教授と
手術に参加することはライセンスの関係上出来ませんので、手術見学、外来見学が3週間の研修の主たるものでした。Otorhinolaryngology/Head and Neck Surgeryの分野に所属する医師達の中で、経口的腫瘍切除術および頭頸部癌手術・再建手術に携わっていたのはHinni教授のほかには前任教授Hayden先生、若手有望株のNagel先生とレジデント数名といったところでした。患者は手術日早朝に来院して待機室で問診や着替えなど準備をして、1件目の手術患者は7時過ぎに入室、全身麻酔後の7時半過ぎにはもう執刀開始となっているのが印象的でした。日中は灼熱のArizonaにある病院ゆえの特色なのでしょうか? レジデントは6時には病院に勤務して手術の準備をします。また施設としては手術室の中に病理検査室があり、手術中にでた切除標本を歩いて10数メートルのところにある病理検査室にもちこんで、切除断端を色素でマークし病理医に指示しながら、そのまま切除断端の確認をするところがとても合理的でした。真似できませんが。手術は経口的腫瘍切除のほかにも、悪性腫瘍手術、頭蓋底手術、難治炎症性疾患手術、嚥下改善手術など多種の手術を見学することが出来ました。手術方法としては、特にわれわれの教室で行っている方法と大きな差はありませんが、手術件数が豊富かつ、手術に注力できる環境のせいか、スタッフのみなさまの経験値の高さが手術に反映されているように感じました。指導医の手術はやはり丁寧で早かったです。ご厚意により、数回手洗いさせてもらって第2助手のようなことをさせてもらいました。

外来は診療ブースで患者が待っているところに医師側が回っていく方式で、やはり握手と日常会話からはいるのがアメリカっぽい。患者は自分自身の病気のことや症状・経過を把握し、説明できるかたがほとんどです。医療保険の仕組み上、MCAに受診することができる人たちは限定されている訳ですので、全てのアメリカ人がそうではないのかもしれませんが。患者さんとの会話の中で発するHayden先生の示唆に富んだ言葉のいくつかが心に残りました(「エルヴィスは死んだことを受け入れなければならない」「I’m your servant, not your master」「Simplest is a best way」)。病棟は全室個室で、病棟回診の際は非定時にも関わらず、部屋に家族が付き添っているのが見られます。有茎皮弁再建した患者は、翌日ドレーン等をぶら下げながら廊下歩行してます。

ちょうど訪れた時期に開催されていた頭頸部癌再建手術のFresh Cadaver実習に無料で参加(本来は十数万かかると思われる)させてもらいました。ただこちらはplastic surgeryコースなため、これまでに経験のない肩甲骨筋皮弁や腓骨筋皮弁などの実習を、ブリーフィングも聞き取れないまま、経験値高めかつ意識高い系のnative speakerたちに混じってずっと冷や汗をかきながら行いました。

Arizonaでの生活


宿主のMary-Leeと
Visiting Physician Programの担当者がくれたリストをもとにメールで交渉し、MCAで働く看護師Mary Lee(60歳女性)宅に、日本でいう民泊させてもらいました。なかなか貴重な体験でした。レジデントコース見学に来たインド人医学生Shariq(24歳)がすでに先輩ホームメイトとして暮らしてました。住所のScottsdaleは住宅地として整備されており、住民は比較的高収入(ホストが言っていた)、住宅はほとんど平屋で(建物面積が広くて2階にする必要ない)半分くらいはプール付き、道路は広く整備され、治安もよいという環境でした。ただし日中は灼熱の太陽にさらされます。白人天国であり、日本人は1人も会いませんでした。夕食はだいたい一人でタコベル、サブウェイ、スーパーでの買い出しなどですませ、最終日には行きつけの?タコベルの若い店員に名前「Ken」を憶えてもらえました。


グランドキャニオンにて
週末にホームメイトのインド人医学生とフランス人医学生(32歳)でグランドキャニオンへドライブ(片道5時間弱)に行ったり、とにかく広いショッピングモールに行ったり、ホスト家でモルモン教の勉強会をしたり、ホストのお母さま宅で食事会をしたり、最終週に帰宅したご主人と2人でおすすめの寿司バーに行ったり、とどれもこれも貴重な体験でした。終盤軽いホームシックになったのは今となってはご愛敬です。