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副鼻腔・アレルギー外来

慢性副鼻腔炎、鼻副鼻腔腫瘍、アレルギー性鼻炎、嗅覚障害などの患者さんの治療を行います。

1.鼻副鼻腔外来について

1)鼻副鼻腔とは

鼻の入り口からのどに続く空間である鼻腔、また、鼻腔と交通する4種類の副鼻腔の総称です。

2)当外来で診療する疾患

慢性副鼻腔炎、鼻副鼻腔腫瘍、アレルギー性鼻炎、鼻中隔弯曲症、術後性上顎嚢胞、嗅覚障害など

2.診断治療について

1)診断について

慢性副鼻腔炎をはじめとした鼻副鼻腔疾患に対しては、鼻咽腔ファイバーによって観察を行った後、必要に応じてCTなどの画像診断を行い、重症度、手術適応を検討します。また、アレルギー性疾患に対しては採血(RIST、RAST)により、アレルギーの原因を精査し、治療に役立てます。

2)治療について

慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下鼻副鼻腔手術や内視鏡下鼻中隔矯正術などを行っております。

3.担当医よりメッセージ

「鼻」の病気が直接命にかかわることは多くはありませんが、鼻閉(鼻づまり)や鼻汁(鼻水)、嗅覚障害(においが分からない)などの症状は生活の質を大きく低下させます。私たちは最新の医療情報の収集や技術の向上に努め、患者さんが快適で質の高い生活を取り戻す手助けをすべく努力しております。

4.各疾患説明

1)慢性副鼻腔炎

細菌感染が原因となる副鼻腔炎(従来型のいわゆる蓄膿症)と、アレルギーが原因となる副鼻腔炎(好酸球性副鼻腔炎)の2つのタイプに大きく分類できます。

治療はタイプにより抗生剤、抗アレルギー剤、ステロイド点鼻薬などの処方と鼻洗浄を組み合わせた保存的治療を行い、保存的治療で改善が乏しい場合には手術を検討します。当科では、現在標準治療となっている内視鏡下鼻副鼻腔手術を全身麻酔下で行っております。特別な理由が無い限り、以前行われていた口から切開する(歯ぐきを切る)手術は行っておりません。全身麻酔による危険が高い場合には局所麻酔下に手術を行うこともあります。

好酸球性副鼻腔炎は喘息に合併することが多く、難治性で再発しやすい病気です(自分の体質として上手に付き合っていく必要があります)。当科では手術療法(+適切な術後処置)と薬物療法(ステロイド内服を含め)を組み合わせて、より良いコントロールを目指しております。

2)副鼻腔真菌症

ご高齢の方、糖尿病の方、ステロイド・免疫抑制薬・抗癌剤などの使用により免疫機能の低下した方などに、真菌(カビ)が原因の副鼻腔炎が生じることがあります。真菌がその場で増えるだけのもの(非浸潤性)と、周囲の組織(眼や脳)に浸潤していくもの(浸潤性)に大別されます。いずれの場合も内服薬などの保存的加療では治らないことが多いため、手術療法(内視鏡下鼻副鼻腔手術または外切開での手術)を検討します。

3)鼻副鼻腔腫瘍・頭蓋底腫瘍

内反性乳頭腫などの良性腫瘍や、嗅神経芽細胞腫などの頭蓋底腫瘍の治療を行っています。頭蓋底腫瘍については、頭頸部腫瘍チームや脳神経外科と共同で治療を行っています。以前は良性腫瘍に対して外切開(顔の皮膚や歯茎を切る手術)で手術を行うことが標準的でしたが、現在は適切な術前診断のもと、適応がある患者さんに対しては顔に傷が残らないよう、低侵襲かつ根治的な内視鏡手術(副鼻腔拡大手術、EMMMなど)を行っております。

4)アレルギー性鼻炎

くしゃみ、鼻水、鼻づまりを三主徴とする鼻炎で、原因の物質(抗原)により通年性と季節性(いわゆる花粉症)に分類されます。通年性の抗原は、主としてハウスダスト(室内塵)、ダニ、カビであり、季節性の抗原はスギ花粉(春)が有名ですが、ほかにイネ科花粉(初夏)、ブタクサ花粉(秋)などがあります。治療は抗原の回避・除去のための生活指導に加え、適宜抗アレルギー薬内服やステロイド点鼻などの保存的治療を行います。当科ではアレルギー性鼻炎を根本から治す可能性がある舌下免疫療法(スギ・ダニ)にも取り組んでおります。

保存的治療が無効な場合には手術的治療を検討します。アレルギー反応の場である下鼻甲介を焼灼したり(レーザー焼灼術:外来日帰り手術)、切除したりします(下鼻甲介切除術)。重症例に対しては、下鼻甲介分布する副交感神経と知覚神経を選択的に切断し、鼻水を出にくくする手術も行っています(後鼻神経切断術)。

5)鼻中隔弯曲症

鼻中隔(左右の鼻の穴を隔てる壁)は顔面の成長とともに7-8割の方で自然に曲がっていくとされますが、曲がりが強い場合には頑固な鼻閉の原因となり、いびきや睡眠時無呼吸症候群を引き起こします。治療は手術(鼻中隔矯正術)となります。下鼻甲介の腫脹を伴っていることが多く、鼻中隔矯正術と下鼻甲介切除術を合わせて行う場合が多いです。鼻中隔に弯曲があると副鼻腔炎や腫瘍の手術がやりにくくなるため、それらの手術時に鼻中隔矯正術を合わせて施行することがあります。

6)術後性上顎嚢胞

以前に口から切開して副鼻腔炎の手術を受けた患者さんのなかに、術後数年~数十年を経て大きな嚢胞(袋)ができる場合があり、頬部腫脹(ほっぺたの腫れ)、痛み、複視(物が二つに見える)などの原因となります。根治的には手術が必要で、原則として全身麻酔下の内視鏡下嚢胞開窓術(袋に大きな穴を開ける手術)を行います。通常の内視鏡手術が難しい位置に嚢胞がある場合は、口から切開して手術を行うこともありますが、特殊な内視鏡手術(EMMM:Endoscopic modified medial maxillectomy)やナビゲーションシステムなどを用いて、顔や口の内を切らない手術を目指しています。

7)嗅覚障害

嗅覚障害の原因は、風邪などのウイルス感染、外傷(頭部の打撲)、慢性炎症(アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎)、中枢性(脳の病気)など多岐にわたります。嗅覚検査と画像検査を行い、適切な診断をつけた上で治療法を選択します。においを感じる細胞(嗅神経細胞)の障害が原因の嗅覚障害に対しては、長期にわたる治療が必要であり、漢方薬や嗅覚リハビリテーション、生活指導を組み合わせた治療に取り組んでいます。アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳神経疾患で嗅覚障害が出現することもあるため、このような疾患の早期発見にも努めています。

その他、眼窩骨膜下膿瘍、眼窩吹き抜け骨折、視神経管骨折、涙道閉塞症などの副鼻腔周辺疾患に対しても、他診療科や関連病院の医師と連携して治療を行います。