患者の方へ

HOME  >  主な疾患  >  難聴・神経耳科外来

聴・神経耳科外来

難聴、聴覚異常感、めまい、顔面神経麻痺の患者さんの診療を行います。

1.難聴・神経耳科外来について

1)難聴・神経耳科外来とは

難聴、耳鳴を含む聴覚異常感、めまい、顔面神経麻痺といった、音を感じ取る蝸牛、平衡感覚をつかさどる前庭から内耳道、中枢神経の異常について、診断と治療を行います。

2)当外来で診療する疾患

  • 突発性難聴音響外傷騒音性難聴、薬剤性難聴、加齢性難聴、機能性難聴といった難聴を来す疾患。
  • 耳鳴、音響過敏といった聴覚異常感
  • 顔面神経麻痺ハント症候群
  • メニエール病良性発作性頭位めまい症などの前庭機能障害

2.治療方針について

1)難聴

急性の感音難聴では、早期の治療により聴力の改善が得られることがありますが、基本的に感音難聴に対しては根本的な治療のすべがないのが現状です。

当科では聴こえでお困りの方に対し、積極的に補聴器装用を勧めております。ただ、補聴器は眼鏡とはちがい、装用後のフィッティングが重要となります、我々は言語聴覚士、補聴器認定技能士と連携し患者さんが満足いくようなフィッティングを目指しております。

また、補聴器の効果がないほどの高度の両側感音難聴の方に対しては人工内耳埋め込み術が適応となり、手術により音の世界を取り戻すことができ、社会復帰をされる方もいらっしゃいます。

2)耳鳴・聴覚異常感

難聴・神経耳科外来において最も力を入れているのが耳鳴診療です。耳鳴に悩まされている方は全国で200万人以上いるとされ、従来は「もう治らない」「付き合うしかない」といわれておりました。そのような現実を打破すべく、当科では積極的にTRT(Tinnitus Retraining Therapy :再順応療法)に取り組んでおります。

TRTとは指示性カウンセリングと音響療法を組みあわせた治療で、音響療法に補聴器、サウンドジェネレータを用いることもあります。最近では、補聴器を用いたTRTを行った方のうち8割前後の方が改善をみとめております。

3)顔面神経麻痺

顔面神経麻痺の多くは、ヘルペスウイルスが関係して引き起こされることが分かっています。重症例では、早期から抗ウイルス薬とステロイド剤を用いた治療を受けることがとても大切です。

4)めまい

めまいの原因はさまざまです。最も多いのは内耳が原因と考えられるものですが、中には脳腫瘍、脳梗塞など中枢性疾患が原因で引き起こされることもあります。正確な診断に基づく治療を受けることが重要です。

3.各疾患説明

難聴疾患

1)先天性難聴

原因不明なことが多いですが、今まで原因不明とされていた難聴の中には遺伝子変異が原因で引き起こされているものがかなり含まれていることがわかってきました。

また、外耳、中耳の形態異常や妊娠中の母体のウィルス感染による難聴もあります。形態異常の場合は治療可能なこともありますが、多くの場合は治療困難です。一側性難聴の場合は特別な治療は必要ないと考えられます。両側性の場合には、難聴の程度に応じて早期から補聴器や人工内耳による療育を行うことで、残った聴覚を活用した言語発達を期待することができます。

2)突発性難聴

文字通り、ある日突然聞こえがわるくなる病気です。耳閉感(耳が塞がった感じ)、耳鳴りを同時に感じることがよくあります。治療はステロイド剤を中心とした薬物治療です。比較的難聴の程度が軽い方は外来での通院治療が可能ですが、中等度以上の難聴の方やめまいを伴っている方、糖尿病などの合併症がある方には入院治療をお勧めしています。残念ながらすべての方が完治するわけではありませんが、早期の治療により改善率が上がることが知られています。

3)音響外傷

爆発音などの衝撃音を聞いた後、あるいはロックコンサートなどで大きな音を一定時間聞いた後に急激に発症する難聴です。しばしば耳閉感、耳鳴を伴います。突発性難聴に準じた治療を行います。

4)騒音性難聴

音響外傷を引き起こすほどの大きさでなくても、工場の騒音など一定以上の大きさの音を日常的に聞いていると、徐々に難聴が進行することがあります。難聴になってしまった場合の有効な治療法はありませんが、適切な騒音管理で予防することができますので、早期の診断と労働衛生管理が重要です。

5)加齢性難聴

加齢に伴い聴覚も衰えてきます。小さな声やざわざわした場所での会話が聞き取りにくい、などがその初期の代表的な症状です。

残念ながら、薬物などの治療で聴力を改善することはできませんが、多くの場合は補聴器が有効です。ただし、補聴器はそれぞれの聴力の状態に応じてきめ細やかな調整をする必要があります。まず、専門医による正しい診断を受けることが重要です。

神経耳科疾患(めまい、顔面神経麻痺)

1)メニエール病

聴力低下・耳鳴を伴うめまい発作を繰り返すことが特徴です。めまいには吐気や嘔吐を伴うことが多く、しばしば耳閉感や強い音に対する過敏性も認めます。内耳の内リンパ腔が拡大する「内リンパ水腫」が関係していると考えられていますが、なぜ、内リンパ水腫がおこるかなど、根本的な原因はよくわかっていません。

治療は、まず、内リンパ水腫の軽減を目的とした利尿剤などを用いた薬物治療を行います。ストレスの関与も指摘されており、十分な睡眠を取るなど、規則正しい生活を行うことも大切です。めまい発作がコントロールできない症例では、鼓膜チューブ留置術、ゲンタマイシン鼓室内投与、迷路破壊術、内リンパ嚢開放術などの外科的治療を行うこともあります。

2)良性発作性頭位眩暈症

めまいの中では、最も頻度が高いものです。三半規管の異常により、寝返りなど「頭を動かした時」だけ回転性めまいが起こります。難聴・耳鳴りなどの他の耳症状は伴いません。治療としては、「浮遊耳石置換法」という理学療法が有効ですが、症状が遷延することや、再発を繰り返すこともあります。

3)前庭神経炎

突然発来する激しいめまいが特徴です。激しいめまいは、通常、数時間から数日続きますが、難聴・耳鳴や他の脳神経症状を伴うことはありません。 メニエール病と違って、めまいを繰り返すことはありません。発作後はしばらくふらつきが残ることもありますが、徐々に消退します。発作の初期は安静が第一で、入院治療を要することもあります。原因としては、ウイルスによる前庭神経や前庭器の障害が考えられています。

4)顔面神経麻痺

原因不明のベル麻痺が最も多いといわれています。水痘-帯状疱疹ウイルスによるものをハント症候群と呼びます。 麻痺がひどい時は、副腎皮質ホルモン(ステロイド)と抗ウイルス薬の投与を行います。 まれに、顔面神経鞘腫などの腫瘍性疾患によって麻痺が起こることがあります。 また、中耳炎や耳下腺悪性腫瘍などにより顔面神経への影響が生じた場合にも顔面神経麻痺が起こります。