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輩からのメッセージ

宮城県立がんセンター 頭頸科部長 松浦 一登 (H2入局)

今回は、頭頸部外科についてお伝えします。頭頸部外科は頭蓋底から鎖骨部までの領域を専門的に扱う外科分野です。学問的には腫瘍や外傷、先天奇形に対する外科治療などを扱いますが、現在のところ頭頸部腫瘍の治療が主たるものです。頭頸部がんは日本人の全がんの約4%を占めており、罹患率は低いと言えるでしょう。(全世界では第7位にランクされています。)しかし、頭頸部領域には「構語」「咀嚼」「嚥下」といった人間の生活に欠かせない機能が集約されており、治療においては生命予後の向上と機能の温存をどのように果たしていくかが問われます。これはすなわち、患者さんの「生き方」「人生哲学」にも踏み込んだ治療を提供することであり、「癌治療は全人的な治療を行わなくてはならない」という命題に最も早くから取り組んでいる分野です。このがんの治療には、手術・放射線・抗癌剤を用いた集学的治療が必要であり、幅広い知識と共に他科・他職種ともコラボレーションしたチーム医療を我々が推進していくことになります。また、外科医としては、その技量によって患者さんのQOLが大きく変わってくるという現実に直面します。怖い事でありますが、外科医冥利に尽きる分野だとも考えています。

私はこの分野に興味を持ち、耳鼻咽喉科(当時)に入局しました。東北大学の医局は当時より、若い者にチャンスを与えていました。私も国立がんセンター東病院でのレジデント研修機会を与えられ、帰局後は大学の頭頸部グループの立ち上げに関わってきました。その後、再び国立がんセンター東病院に戻りましたが、2004年に現施設に着任し、今日に至っています。教室からも様々なサポートを戴き、現在では全国屈指の頭頸部癌治療施設となっております。20年以上頭頸部腫瘍の治療に携わってきましたが、未だに新たな発見と挑戦が続いています。

未来の耳鼻咽喉・頭頸部外科医の皆さんへ。外科手術に興味のある方にはわくわくする日々が待っていると思います。一方、近年は頭頸部癌化学放射線療法の急速な進歩がありますが、東北地方ではこの分野の専門家は皆無です。「我こそは」と思われる方には、全国の第一線での舞台や世界への挑戦が待っています。

更なる扉を開ける鍵を皆さんはお持ちです。一緒に仕事が出来る日を楽しみに待っています。